CONTENTS
      ●親魚の確保と熟成
      ●薬剤類の準備
      ●採卵と受精(人工授精)
      ●仔魚の発達と餌料系列
      ●試験種苗の販売等

    1.親魚の確保と熟成
     ドジョウの親魚はできれば自分で飼育して大きくなったものを使います。詳しくは牧野博氏の著書や鈴木 亮氏の著書を参考にしてください。
     試験的にはメス3尾とオス1〜2尾を用意すれば採卵ができます。大きさとしては10g〜20gのものです。 メスは腹部が膨れたもの、オスは肛門の基部付近が左右に腫れたものです。25℃で飼育し、更に成熟を促しま す。オスとメスは同じ容器で飼育してはいけません。オスがメスを殺してしまうことがしばしばです。

    写真001 採卵用一時飼育容器とメス親

    2.薬剤類の準備
     使用する薬剤や器具類は牧野・鈴木両氏の著書等を参考にしてください。ここでは大筋のみ述べます。

     ○性腺ホルモン
      いわゆる排卵誘発剤です。ゴナドトロピンが使われます。親魚10g当たり100ユニットを腹腔注射します。
     ○麻酔薬
      販売されています。ネットで調べれば購入できます。
     ○リンゲル液
      販売されています。ネットで調べれば購入できます。
     ○注射器
      100μι単位の注射器が便利です。ネットで調べれば購入できます。
     ○解剖器具類
      ハサミ、ピンセット、針などを使います。ネットで調べれば購入できます。
     ○乳鉢
      オスの生殖腺をすり潰すのに使います。ネットで調べれば購入できます。
     ○その他
      ボール容器、ビーカー、バケツなど、できるだけ多く用意しておきます。

    3.採卵と受精(人工授精)
    @ホルモン注射
     採卵(受精)予定の約24時間前にメスの腹腔に性腺ホルモンを注射します。注射の前にメスを麻酔します。1尾ずつ 麻酔して注射していきます。注射針は、膨らんだ腹部に適当に刺します。角度が悪いと針が通りませんので、角度斜め にして確実に針が刺さるのを確認してからホルモン剤を注入します。

    写真002 メスの腹腔へのホルモン注射

    A排卵(産卵)確認
     12時間以上を経過後、メスの腹部を押さえて卵が漏れ出すか確認します。そのままでは腹部を押さえられないので、 麻酔をしながら行います。1時間から数時間ピッチで確認し、単体の卵が漏れ出すようになったら採卵します。
    B精子液の調製
     オスを麻酔し、または頭部を切断して動きを止めます。肛門周辺の腹部を切開し、生殖腺を取り出します。ティッ シュペーパーなどで水分を取り除いた後、乳鉢ですり潰します。リンゲル液を100mL程度加えて精子液とします。

    写真003 供試オス(左)オスの生殖腺(中)乳鉢によるすり潰し(右)

    C搾卵と受精
     メスを麻酔にかけ、布巾を用いて滑らないようにしてから腹部を押さえて卵を搾(しぼ)ります。最初は胸部を押 さえ、ゆっくり搾りながら肛門に向って搾っていきます。搾った卵はボール容器やビーカーに採取します。卵は付着 性が強いので、採卵容器にはリンゲル液を適当に入れておきます。
     卵を搾り終えたら採卵容器に適当量の水を入れ、精子液を加えて撹拌します。この操作は一連の流れとして行ない ます。途中で休憩してはいけません。淡水中では速やかに受精が進行します。撹拌しながら5分程度をキープし、上 澄み液を捨てて卵を洗浄します。この操作は数回行い、精子液を除去します。
    D孵化槽への展開
     採卵容器を撹拌しながら卵を浮遊させ、底部に均一になるように孵化槽に卵をまきます。一箇所に落とすと卵は重 なり合って付着します。できるだけ均一になるようにまきます。孵化槽の一箇所にエアーをかけて終了です。

    写真004 搾卵と受精卵の展開

    4.仔魚の発達と餌料系列
     卵生魚類は『受精卵』⇒『前期仔魚』⇒『後期仔魚』⇒『稚魚』を経て成魚へと成長します。この発達段階で摂餌 するエサも変わって(変えて)いきます。
    @受精卵期
     卵の間は適度な温度と酸素が必要です。ドジョウの場合は25℃で2日以内に孵化します。
    A前期仔魚期
     孵化してから卵黄が消失するまでの時期の仔魚です。2日程で口が出来てきますのでエサをつつき始めます。この 頃から淡水ワムシを与えると効果的です。但し、本格的には食べません。
    B後期仔魚期
     卵黄が消失して摂餌を開始する時期です。消化管に外部からの物体が初めて入ってきます。卵黄ではなく、エサか ら栄養を吸収します。口に入る生餌が必要です。少なくとも2日程度は淡水ワムシを与えると歩留りが向上します。
     淡水ワムシを与えながらブラインシュリンプを併用していきます。仔魚が確実にブラインシュリンプを捕食するこ とを確認したら、淡水ワムシを与える必要はありません。ブラインシュリンプに切り換えます。淡水ワムシの期間は 2〜3日程度です。
     孵化後1週間頃から微細粉末の配合飼料を併用して与えます。ドジョウ仔魚は配合飼料で落ちることはありませんが、 成長が止まります。早く大きくするためにできるだけブラインシュリンプを長期間与えます。尚、ドジョウはミジンコ をあまり好まないようです。
    C稚魚期
     孵化後2週間程度で順調な仔魚は稚魚になります。稚魚は成魚と基本的に同じ形態です。後期仔魚と稚魚の違いは、 後期仔魚が背鰭や尾鰭がつながっているのに対し、稚魚は分離しています。背鰭が確認できたら稚魚期に入ったと考え れば良いでしょう。この頃の大きさは15mm程度です。
     稚魚は成熟していない段階の小さいものを指す言葉です。基本的には成魚と同様の飼育方法を採用します。この段階 でできるだけ大きく育てて放流するのが安全な方法です。
    Dその後
     その後は養殖の世界です。牧野・鈴木両氏の著書等を参考にしてください。

    写真005 孵化5日後の後期仔魚(左)孵化8日後の後期仔魚(中)孵化12日後の後期仔魚(右)

    5.試験種苗の販売等
     人工採苗によって得られたドジョウ稚魚の販売を行います。但し、わむし屋は種苗業者ではありません。あくまでも 養殖試験などの目的で入手したい方への少量販売です。尚、使用薬剤や器具などのお問合せにはお答えいたしかねます。 牧野・鈴木両氏の著書等を参考にしてください。
    (1)前期仔魚期用餌料
     ○淡水ワムシ(ツボワムシ)中密度培養体100個体/mLの販売です。1L単位で販売します。
      GGSPを与えて更に増やすことが出来ます。
    (2)試験用稚魚
     ○養殖試験用稚魚を100尾単位で販売します。大きさは2cm以上あります。単価としてはかなり高くなります。
    (3)委託種苗生産
     ○あくまでも試験用としての種苗が必要な場合、孵化1週間以上経過した稚仔魚を委託生産販売いたします。
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