KHV(コイヘルペスウィルス)一次検査のご案内

    ●DBTではKHV感染経路のキャリアー(中間媒体)生物の存在に興味を持っています。従ってKHV感染魚そのもの を研究対象としている訳ではありませんが、KHV感染魚からのKHV遺伝子の検出は研究経過として当然求められる 成果です。
     これまでにKHVの一次検査に関する問合せが多数寄せられ、平成17年2月より、ご要望の検出サービスを開始 することと致しました。
     検査方法は【農林水産省:特定疾病等対策ガイドライン】に準拠しています。
    ●申込書を用意しましたので、ダウンロードして使用してください。
    ★ダウンロードはマウスを右クリックし、【対象をファイルに保存】を選択してください。
     左クリックでは画面が開かない場合があります。

    KHV(コイヘルペスウィルス)PCR一次検査申込書
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    1 遺伝子検出操作の流れと留意点
    1.1 検出操作の流れ
    (1)主要操作
     斃死コイのKHV検出の操作の流れは図1.1の通りです。当社が扱う基本部分は点線の枠で示した遺伝子検出部分です。 コイ斃死体の扱いにつきましては、別途相談に応じます。
    (2)所要時間
     解剖された試料搬入の場合で9時間を必要とします。一般には2日とされています。
     @ 解剖操作・・・・・・・2時間
        器具類の滅菌、解剖、感染部位採取の操作です。
     A 鋳型遺伝子の抽出・・・3時間
        タンパク質の溶解から遺伝子の洗浄・溶解に至る操作です。
     B PCR増幅・・・・・・・3.5時間
        反応液の調製から増幅に至る操作です。
     C 電気泳動・確認・・・・1.5時間
        電気泳動と検出バンド確認、撮影に係る操作です。
     D 報告書の作成・・・・・1時間
        泳動バンドをデジタル化し、画像処理を施します。
     E 斃死体の処理・・・・・2時間
        煮沸処理、埋却に係る操作です。

      図1.1 KHV遺伝子検出に係る操作の流れ
    1.2 流れと留意点
    (1)試料の搬入
    【検出のみの依頼(通常)】
     試料は依頼者が作成し、10cc程度の小型滅菌サンプルビンに封入して搬入してください。KHV検出可能組織はエラ組織です。 最低でも30mg(3mm立法)が必要です。サンプルビンには依頼者がトレース可能な試料名を明記してください。搬入には腐敗 の進行を避けるため、氷冷等の措置を講じてください。ホルマリン固定は厳禁です。

    【解剖・処理を含む依頼】
     コイ斃死体を搬入し、組織採取や斃死体の処理を含む依頼の場合には次の手順に従ってください。
     @ 斃死コイは、二重の厚手ビニール袋に入れ、袋の口を閉じた状態にする。
     A 即日搬入ができない場合は、ビニール袋のまま冷蔵庫保存する。
     B 搬入時にはアイスボックス等で氷冷する。
        ※KHV感染が疑われる生体コイは当社の指示に従う用意がない場合には受け入れません。

    (2)感染部位の採取(解剖・処理を含む依頼)
     KHVの検出可能部位はエラ組織です。コイ斃死体が持ち込まれた場合、右エラ組織と左エラ組織を別々に60〜100mg採取し、 それぞれを分析サンプルとします。結果はそれぞれに出します。また、サンプルの約半分をアンプルに封入し、-30℃で凍結 保存します。保存サンプルは結果提出後3ヶ月間は保存を続けます。

    (3)鋳型遺伝子抽出
     ニッポンジーンのISOTISSUE抽出キットを用います。抽出フローは検出方法に明記しました。
    (4)PCR反応液の調製
     PCR反応液の組成は検出方法に明記しました。結果をより確かにするために、ネガティブコントロールとポジティブコント ロールを併用します。
    【ネガティブコントロール】
     操作中にKHV遺伝子が試料外から混入していないことを証明するためのサンプルで、抽出遺伝子の代わりに滅菌した超純水を 加えます。このサンプルで遺伝子が検出された場合は、反応液の調製からやり直しとなります。
    【ポジティブコントロール】
     KHV遺伝子が確実に入ったサンプルのことです。このサンプルで遺伝子が検出されなかった場合は、反応液の調製に失敗した か増幅に失敗したことを意味します。反応液の調製からやり直しとなります。
    (5)PCR増幅
     サーマルサイクラーはTaKaRa TP400を使用します。PCRプロトコールは検出方法に明記しました。

    (6)電気泳動
     C.B.S社のサブマリン泳動装置(EP100T)を用います。方法は検出方法に明記しました。

    (7)標的遺伝子の確認
     小型トランスイルミネータを用います。方法は検出方法に明記しました。
    (8)コイ斃死体の処理(解剖・処理を含む依頼)  KHVは55℃程度で失活しますので、斃死体の処理は高温処理が有効です。処分する場合は、ステンレスタンク内で90℃以上、 30分以上の煮沸を行い、研究所の所有地内に埋却します。また、二次検査のための保存、返却が必要な場合は別途承ります。


    2 保有機器・施設
     KHVの遺伝子検出に関連する保有機器・施設を下表にまとめました。
    表2.1 遺伝子検出に必要な主要保有機器等



    写真2.1 ゲノムDNA抽出操作(左:冷却高速遠心機  右:操作室内と抽出器具類)

    写真2.2 遺伝子増幅操作(左:サーマルサイクラー 中:電気泳動とトランスイルミネータ 右:電気泳動槽)

    3 検出方法
    3.1 鋳型遺伝子の抽出
     エラ組織からのKHVゲノムDNA抽出方法を下図に示しました。抽出にはニッポンジーンのISOTISSUE(キット)を用います。

      図3.1 エラ組織からのウィルスDNA抽出フロー
    3.2 PCRの操作
    (1)使用プライマー
     W.L.Gray et al(2002)に紹介されているKHV検出プライマーの中から、標的遺伝子290bpを増幅するプライマーを選定しました。 このプライマーは『特定疾病等対策ガイドライン』の一次検査プライマーと同様です。プライマー合成は日本バイオサービスに 依頼しています。合成成績書より両プライマーを100pmol/μιとなるようTEで希釈し、希釈溶液は10μιに小分けしてストック として-20℃で保存しています。

    表3.1 KHV検出プライマーのヌクレオチド配列


    (2)PCR反応液の組成と調製
     PCR反応液の組成を下表に示しまた。ネガティブコントロールではFのTempDNA(鋳型遺伝子)の代わりにEのdDW(滅菌超純水) を加え、ポジティブコントロールではFのTempDNAの代わりに当社保有のKHV鋳型遺伝子を加えます。従って、組織サンプル1検体 の分析でも3試料をPCRにかけることになります。
    表3.2 KHV検出用PCR反応液組成


    (3)PCRとプロトコール
     当社比較検討の結果、安定した増幅が得られた方法として、当社の方法を用います。
    表3.3 文献に記載されたプロトコールと今回検討したプロトコール


    (4)電気泳動
     アガロースは標的遺伝子の大きさによって選択することとされており、KHVの標的遺伝子290bpの低分子ではアガロースSを選定しま す。ゲル濃度も同様に標的遺伝子の大きさで選択しますが、ここでは1.5〜2%の範囲とします。電気泳動バッファーはTBEbufferを 選定します。増幅遺伝子の大きさを確認するためのマーカーは100bp DNA Ladderを用います。このマーカーは100〜1500bpをカバーす るマーカーです。

    (5)標的遺伝子の確認
     標的遺伝子検出の発光パターンをビデオカメラに収めた後、画像処理によってパターンを引き出します。マ−カ−遺伝子の300bp直 下の290bp部分にバンドが検出されたサンプルは陽性と判断されます。

    4 検出例
    (1)供試試料
     国内においてKHVの発生が疑われる水域複数で採集した斃死コイとその周辺で採集したフナ、ドジョウ、ザリガニのエラ組織。
     ※現在はすべての水域が『持続的養殖生産確保法』によって持ち出し禁止水域に指定されています。
    (2)試験方法
     3に紹介した方法。
    (3)検出結果
     下の表はコイ運搬中の浸出液やその他の生物も対象にした検出結果です。コイA,B共にエラ組織で確実に検出されています。同じ水 域でも他生物には感染していないようです。
    表4.1 複数試料を対象としたKHV試験・検出回数と結果


     コイAとBのKHV遺伝子の検出結果を写真に示しました。標的遺伝子は290bpです。写真はビデオカメラで撮影したものなので、強い発 光以外を検知していません。図では@、AレーンとD、Eレーンにバンドが見えますが、実際にはB、Cレーンにも細いバンドが光っ ています。
       
    写真 4.1 コイA,BのKHV遺伝子検出結果と供試試料